正しい推論は正しい

推論

大雑把でわかりにくいと思いますが、要するに「ある仮定をおいた上で、どうすれば正しい答えが得られるか」を考えることです。

推論には色んなパターンがありますが、最も嬉しいのは「仮定が正しければ結論も正しく、仮定が間違っていれば結論が間違っている」という場合です。ただ、こういうケースはあまりありませんね。

現実で最も多いのは「仮定が正しければ結論は正しく、仮定が間違っていても結論が合っている可能性がある」という場合じゃないかと思っています、しらんけど。

地球の大きさを推定する

とても有名な問題として、地球の大きさ(半径)を推定するというものがあります。どうすればできるでしょうか?

ものすごく長いメジャーを用意すればできるかもしれませんが、それは非現実的ですよね?

車で延々とまっすぐ進んで一周して戻ってきたときのメーターの進み具合を見ればわかりますが、実際には海があるのでできませんよね。

では人類が地球のおおよその大きさを知ったのはいつ頃のことでしょうか?なんと、紀元前(今より2000年以上前)には既に人類は地球が球形で、その大きさが一周が約40000キロであることを知っていたのです。

昔の人はどうやって地球の大きさを推定したのでしょうか?

エラトステネスに倣う

地球のような大きなものを推定しようと思うと、地球上で考えていては先程のようにスケールが違いすぎてわかりません。

なので、古代ギリシア人は宇宙スケールで考えることにしました。地球にとって最も身近な天体といえば月と太陽ですよね。ここでは太陽を使うことにしましょう。

さて、古代ギリシア人は地球からは小さく見える太陽が実際にはとても大きく、とてつもなく遠くにあることを知っていました。

なぜそれを知っていたのかについてもエピソードがあるのですが、今回は割愛します。ここでは知っていたと仮定して話を進めます。

点光源

さて、太陽のような光源が近くにある場合には中学の理科の実験で習うように光は上の図のように進み、地球から見れば真っ直ぐきた光だったり、斜めからきた光だったりします。

しかし、実際には太陽は地球から1億5000万kmの彼方にあるので、その光は全て真っ直ぐきたものと見做せます。

面光源

これを面光源といい、宇宙のような大規模スケールで物事を考えるときに利用します。

古代ギリシア人であるエラトステネスは図書館で学ぶうちにシエネと呼ばれる地方では夏至に深い井戸にまで太陽の光が届くことを知り、それはつまり夏至にシエラの真上に太陽がくるということを意味することを理解しました。

そして、これを利用して地球の大きさを計算できることに気がついたのです。

地球の大きさの求め方

まず、彼はシエネとシエネの南に位置する都市であるアレクサンドリアの距離を測りました。紀元前には当然測量機などないので、彼は隊商の往来日数データからアレクサンドリアとシエネ間の距離をおよそ5000スタディアと見積もりました。

スタディアとは当時の距離の単位のことで、現代における185m(アッティカスタディオン)だったり157.5m(エジプトスタディオン)だったりする(ここには諸説ある)。

そして夏至の日にアレクサンドリアで太陽の南中高度を調べ、それが7.2度傾いていることを突き止めました。

7.2度というのは360度の1/50なのですから、シエネとアレクサンドリアの距離は地球一周の1/50ということになり、地球一周は5000*50=250000スタディオンということになります。

大切なこと

この250000スタディオンというのは約46000kmになり、実際の値よりも17%程度大きく見積もっていることになるのですが、それは大した問題ではないのです。

ここで大事なのは「地球が球形である」「太陽は地球から遠く、面光源とみなせる」「シエネが夏至に南中高度が90度になる」という正しい仮定から地球の大きさを正しく推論できたということなんです。紀元前なんですから、多少の測量誤差は全く問題ありません。

仮にエラトステネスが地球一周を50000kmと見積もっていたとしても十分すぎる成果です。

大事なのは「地球の大きさが有限であり、50000km以下である」と証明したことなんです。これをやったのが2000年以上前の人だなんて、当時のギリシア人はどんだけ賢かったんだよって話ですよね。

現代においてもまだ地球平面説信じてる人がいるみたいですが、2000年前の人に負けてるってことですよ、はい。

まとめ

現代においてもこういった正しい仮定と正しい推論から大雑把な答えを求めるのが苦手な人いますよね。

例えば車が故障したときに「修理いくらかかりますか?」ときかれていちいちちまちま各パーツの損傷具合から正確な値を求めるのもいいんですけど、顧客はそんなこと求めてないんですよね。

「全部交換したら20万円かかるけど、全部壊れているわけではないし多く見積もっても全損の7~8割だから15万円くらいかな」みたいな思案でいいんですよ、求められているのは素早いレスポンスなわけです。

そこで「だいたい15万円です」って言って結果的に16万円かかったからってキレてくる客は客じゃないです。