小説「くちびるに歌を」に救いを求めた件

くちびるに歌を

くちびるに歌をとは中田永一作の青春小説である。

『くちびるに歌を』(くちびるにうたを)は、中田永一の青春小説。NHK全国学校音楽コンクールの課題曲となった「手紙 〜拝啓 十五の君へ〜」の作者であるアンジェラ・アキのテレビドキュメンタリーをもとに小説化された。

あらすじ

自分が書くよりWikipediaをそのまま引用したほうがいい気がするので引用します。

長崎県・五島列島のとある島の中学校。合唱部顧問の松山ハルコは産休に入るため、代わって松山の中学時代の同級生、自称ニート」の臨時教員・柏木ユリに、1年間の期限付きで合唱部の指導を依頼する。

それを知ったその学校の中学生の中には柏木の美貌目当てに合唱部に入部したいという男子生徒が続出、桑原サトル・向井ケイスケ・三田村リクらが入部したが、もともと合唱部には女子しかおらず、以前から合唱部に所属していた仲村ナズナ・長谷川コトミ・辻エリなど、受け入れる側の女子生徒と軋轢が生じる。さらに柏木は7月に諫早市で行われるNHK全国学校音楽コンクール長崎県大会出場にあたっても独断で男子との混声での出場を決め、合唱部の男女生徒間の対立は深まるばかり。

その一方、柏木は課題曲「手紙 〜拝啓 十五の君へ〜」にちなみ、「誰にも見せる必要はないから、15年後の自分に向けて手紙を書け」と部員に宿題を出す。これを受けて彼らがそれぞれに書く手紙、あるいは登場人物同士の会話を通じて、彼らがそれぞれに抱えている秘密と心の傷も明らかになっていく。その後合唱部内でのある事件を経て、これまでやる気のなかった合唱部所属の男子生徒もコンクールに向けて真面目に練習に打ち込み始めるなど次第に部内のわだかまりが解消されていき、やがて長崎県大会の本番に挑むことになる。

まあ簡単に言うとNHK合唱コンクールに参加するまでの過程を描いた小説なんですよね。友情と青春が入り混じっていてすごくいい感じの内容で、ぼくも複数回読むなどお気に入りの小説の一つです。

映画化もされたので、一般向けなんだろうなあと思います。ここのブログの読者さんでも読んだ方が一人くらいいらっしゃるのではないでしょうか。

ちなみに小説はちょっと読むのが苦手…という方向けに漫画版もでているのでそちらもおすすめします。全三巻なのですぐに読み終わります。

注意点というほどではないですが、会話などは基本的に長崎弁なので長崎弁が苦手な方はちょっと厳しいかもです。

でも、標準語とあんまり変わらない感じなのでぼくでもスラスラと読むことができました。

以下、ネタバレ

ネタバレになるので注意。

で、これを最後まで(漫画だと二巻まで)読めばわかるのだが、主人公であるナズナは小学校高学年までケイスケと仲がよく、ラブラターを送るくらいまでの間柄になったことがあるのだが、とある事情から中学校では少し距離をおいています。

それが、合唱部の男子と女子のわだかまりが解けてから仲が急接近して、いよいよNコンに参加するために前日にメンバーでホテルに泊まるわけです。

で、ホテルで女子部屋で一人でのんびりしているときにそのケイスケから大切な話があるから来てほしいって電話がかかってきたらドギマギしますよね!?

このとき、ぼくも内心「キター!!!」ってなってましたよ、ええ。

フォロワーの方にはバレていると思うのですが、ぼくは極度の幼馴染推しなのです。

唯一推してないのが名探偵コナンと工藤新一と毛利蘭くらいです。

あと、依媛奈緒も珍しく幼馴染なのに受け入れられないです。TV版のせいかもしれん…

その時の会話

「ナズナ、ホテルにおる?話があるっさ。ゲームコーナーまで来てくれ」
「話って、なん?」
「直接、会って話す。電話で言いにくいことやけん……」
「なん? 色恋がらみ?」
冗談半分でそう言うと、彼が口ごもった。逆に私が動揺してしまう。
「……真剣な話やけん。十分以内にゲームコーナーまで来いよ」

これが青春以外のなんだというんですか!!学校とかじゃなくてホテルだっていうのがいいですよね!

ただ幼馴染のケイスケに会いにいくだけなのに、と前置きしつつこのあと鏡で前髪を整えたり、服の皺を確認したりしてナズナはゲームコーナーに向かうんですよ。

このういういしさがたまらないので、ぼくは中学生の恋愛を見ているのが一番好きですね。

「言いにくいことなんやけど……」
「なん?」
「俺、実は、告白しようとおもっとる」
「……ちょ、ちょっと待って。告白って、つまり、その、恋愛がらみの告白?」
向井ケイスケはうなずく。
「本気?」
「本気ばい」
赤くなっているであろう自分の顔を、彼のほうに向けていられなかった。自然とうつむきがちになる。

この辺読んでるときとかずっとニヤニヤしてました。ちなみにこのあたりの描写はもう完全にぼくの脳内通りの絵をモリタイシ先生が漫画版で描いてくれているのでぜひ見るべし。

「ほ、ほんとうに、告白すると?」
「よくかんがえた結果ばい」
〜中略〜
「ど、どこにほれたと?」
おもいきって、私は聞いてみる。
「言わんばだめか?」
「うん、聞きたい」
「合唱に、一生懸命なところとか……」
「ほかには?」
「あとは、そうやな……」
すこしかんがえるような仕草をして、彼は言った。
「……メガネもよく似合っとるし」
すーっと一気に冷静になった。
私の両目は普通よりもいいくらいで、メガネをかけたことはない。

ここでうわあああああああああ!!!ってなったのを未だに覚えています。中田先生、まじで許さんぞ!!!

そう、ケイスケが告白しようとしていたのはナズナではなく合唱部の部長で、ナズナはその相談相手として選ばれただけだったのでした。

ここからなにか湊かなえ先生みたいにどんでん返しあるかなあなんて期待していたのですが、これっぽっちもまったくなかったです。

最終的にナズナはケイスケが部長に告白するのを手伝ってあげるところまで描写されています(告白の結果がどうなったのかは明記されていないのです)

三人の関係について思うこと

最初、ナズナの恋心が砕け散って「うわあああああああ」ってなっていたのですが、落ち着いて読み直すとこれは壮大な伏線のような気がしてくるのです。

というのも、出産のために産休をとった松山先生の代わりに赴任してきた柏木先生というのは、中学生時代の松山先生の同級生なのです。

そして、松山先生の旦那さんは中学生の時から大学二年の時まで柏木先生と交際していたいわゆる元カレというやつなのです。

「だって、ハルコの結婚相手、中学のとき、私がつきあってた男子なんだぞ」
詳細を聞いてみる。中学時代に松山先生とその旦那さんと柏木先生は三角関係にあり、松山先生は身を引いたという過去があったらしい。その後、柏木先生とその人は別れてしまい、その人は松山先生とつきあいはじめて、めでたく結婚したというわけだ。

ここ、漫画版の方が細かく書いているのでぜひぜひ読むべし。

で、これを読みかえしていて思ったんですよ。

これは部長=柏木先生、ケイスケ=旦那さん、松山先生=ナズナの時を超えた写像なのではないかと。それを暗喩しているのではないかと。

そうでないとナズナが、いやぼくが救われません。

漫画版でここが原作よりもより細かく描写されているのもそれが理由な気がしてなりません(まさかモリタイシ先生が勝手に設定を付け加えたわけではないでしょうし)

続編が読みたいけど、続編は出てほしくない、そんな気分です。

まとめ

中田永一先生は素晴らしい作品をたくさんつくっています。ぼくも好きな作品がいっぱいあります。

でもこのオチはうーん!!ってなります!

断っておくと嫌いなオチではないんです。ハッピーエンド、自分の理想ばっかりの作品って楽しいかもしれないですが、面白くないじゃないですか。

なら自分でハッピーエンドの作品書くしかねえってなるじゃないですか。ぼくが小説を書き始めたのも元はと言えばそういうのが動機だったような気がします。

最後にぼくのオススメの小説を紹介しておきます。