里見香奈女流五冠の切れ味は健在でした

将棋

ヒューリック杯清麗戦

今年新設された七つ目の女流タイトル戦です。

詳しくは存じ上げないのですが、ヒューリック杯とあるあたりは棋聖戦の女流タイトルというような扱いでしょうか?

優勝賞金が700万円と女流王座戦の500万円を抜いて最高額となり、序列単独一位らしいのですが女流名人より上になっちゃって大丈夫なんでしょうか…?

棋譜

2019年8月3日 五番勝負 第1局 里見香奈女流五冠 対 甲斐智美女流五段|第1期ヒューリック杯清麗戦

個人的に気になったところをピックアップして分析していきましょう!

ちなみにぼくの気力は精々アマ初段程度なので指し手評価は完全にソフト任せになりますが、ご了承ください。

序盤の意表を突かれた作戦

☗7八玉まで

さて、序盤の駒組みの段階でいきなり意表を突かれました。

角が素通しですが、☗2二角成には☖同銀と形良く取れます。

なんとなく角交換を避けたくなるのですが、☖4四歩のような手は☗2四歩 ☖同歩 ☗同飛から無条件で飛車先の歩を交換されて後手不満でしょう。

飛車先を受けたく☖3三角とでるのは先手が角交換をしてくれれば狙い通りですが、してくれなかったときに空振る感じになってしまうので指したくありません。

つまり、飛車先突破と角交換を同時に受けるのは難しいので落ち着いた展開にしたいのであれば石田流っぽい☖3四飛などが本命でしょうか。

棋譜を見ていた段階ではそうやって受けるのとばかり思っていました。

☖3三金まで!!

ところが実際に指された手は角道と飛車先を同時に止めてしまう☖3三金!!

これは確かに角交換と飛車先の歩の交換を同時に防いでいますが、攻撃が重たい感じがして相手に陣形を整えるチャンスを与えてしまいそうです。

でもよく考えれば先手の利が活きるのは先手が指したN+1手と後手が指したN手の差が大きいときなので、先手も後手もゆったりとした展開になればこの一手の差が紛れて後手も十分指せると判断されたのかもしれません。

☖2五桂まで

中盤の駆け引き

しかし先手の甲斐五段も先手の利を活かして+300~400程度のリードを維持し続けて局面は中盤戦へと入っていきます。

局面が動いたのは28手目の☖2五桂でした。

これは後手から最初に一歩得できるのですが、どこかで歩を持ち駒にされると桂馬を取られてしまうという少し先制気味の牽制といえるでしょう。

現状は先手に歩がないのですぐにはとられないですが、後手はここからなんとか攻めを繋げていかないと無条件で桂馬をとられてしまうと形勢が先手に傾いてしまいます。

この時点でソフトの評価値は先手+400ほどで先手が指しやすいと判断していたようです。

ちなみにソフトによれば最善手は☗2二角成と角交換をする手だったようです。

※居飛車側は振り飛車側に角交換をされて同玉とするしかない場合、玉が囲いから離れてしまうのでマズい場合が多いため。

ただ、確かに先手から角交換をしにくいのも事実で、飛車を二筋に移動させてしまうと将来的にどこかで☖3七桂成のタダ捨てから☗同桂 ☖3六歩のような筋で攻められたときに先手の飛車が二筋から逸れると後手の飛車が威張ってくる格好になるためです。

後手からの攻め筋の一例

これは一瞬桂損するもののすぐに取り返せる格好であり、飛車が逸れれば角打ちなどの楽しみもあり後手も十分有望な展開でしょう。

先手の痛恨のミス

局面が大きく動いたのは45手目の☗5五角でした。

☗5五角まで

一見すると☗1一角成の香取り・☗7四歩からのコビン攻め・☗2五飛と飛車を切ってからの☗7四桂のような手が見えて上手い手のように見えます。

ここで香車取りを受けていたりすれば先手有望だったのですが、上手い切り返しの手がありました。

☖4六角!!

それが☖4六角でこれは単純に飛車と角の両取りなので☗同角と応じるしかありません。

しかし、この必然とも言える☗同角が悪手でこのあとで先手は再び☗5五角と打つのですが、この違いがわかるでしょうか?

二度目の☗5五角

後手の4筋の歩が4五から4六に移動していることがわかります。

これは言い換えれば無条件に(一手も使わずに)4筋の歩を前進させたことになり、後手から言えば一手得をしたことになるわけです。

つまり☗5五角に対する☖4六角への応手が☗同角しかなく、その☗同角が悪手なのでそもそもの☗5五角が疑問手、ということになるわけです。

この時点で先手の一手得はなくなったといっても良いでしょう。

☖5四歩まで

再度の角打ちにも後手はノータイムで☖5四歩と指します。☗4六角と引けば☖3六飛と走って角取りか飛車成りが約束されるので指すわけにはいきません。

仕方なく☗1九角成としますが、これは香車をとれたメリットよりも角の利きがズレてコビン攻めができなくなったデメリットの方が大きいです。

このあたりからはっきりと後手の里見香奈女流五冠が主導権を握ったような気がします。

後手待望の☖4七歩成

それから数手進んだ56手目の☖4六歩成が強烈でした。

後手は美濃囲いが固く、横からの攻めには強いので飛車成りを許してもと金の攻めの方が速いという判断ですね。

華麗な決め手

☖2九龍まで

後手がペースを握ったまま局面が進んでいたのですが、78手目の☖2九龍はぼくも思わず「えっ!?」と声がでてしまいました。

というのも見てわかるように☗同龍で龍がタダだからです。しかも☖7二歩成で王手で銀までとれるので狙いがわかりにくい手なのですが、桂馬を持ち駒にすることが後手の狙いなのです。

仮にここで☗2二歩成 ☖同金 ☗2九龍と進めば次の☖7六桂が激痛です。

☖7六桂まで

後手は角金がある上にいつでも金の補充が利くので先手はもはや受けが利きません。しかし龍が2九に引かされているので後手玉に迫る手もなく、これは後手必勝形です。

投了

☖5九龍まで

この☖5九龍をみて先手の甲斐五段が投了されました。

先手玉は二枚飛車に加えて後手の持ち駒に金が二枚あるのでとても受けきれません。徒に受けても延命にすぎず、数手進めば必至がかかるような局面です。

受けは効かないので攻めるしかないのですが、王手で迫れる手が☗7一桂打くらいしかなく、これは☖同金とすれば☗8二銀から詰むのですが、平凡に☖7一玉と逃げられて王手が続きません。

よって受けの手も攻めの手もないので投了もやむを得ないと言えるでしょう。

感想とまとめ

なんだか随分久しぶりに将棋の記事を書いた気がします。

最近プロ編入試験の話題などでお忙しい里見先生で実力が発揮できるか少々心配だったのですが、完全な杞憂だったようです。

特に八分弱で決断された2九龍からの見切りの速さは「そんな手が!?」と完全に意表を突かれました。

まだまだ五番勝負の第一局ですが、残りの対局でも出雲の稲妻が炸裂してくれることを楽しみにしております。

P.S 局面ジェネレータ復活させたよ

https://shogi.mydns.jp/

本記事の棋譜画像はすべて局面ジェネレータで作成したものを利用しています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました